総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- フォロー 新型コロナ 「正直な若者がばかをみる」のを避けるには 谷口恭・谷口医院院長 2022年3月7日 保存保存 文字 印刷 福ザサを求める参拝客でにぎわう今宮戎神社=大阪市浪速区で2022年1月9日午後3時41分,木葉健二撮影 新型コロナウイルスの新規感染者数は少しずつ減っていますが,まだ全国で1日7万人ぐらいの感染者が出ています,それだけに「新型コロナにかかったかも」と思った人は,なるべく早く検査を受けて,かかっていれば治療を受けるとともに,入院や自宅療養など自身を隔離する措置をとってもらうのが,感染拡大防止のためには望ましいわけです
ブランド時計スーパーコピー ただし,この通りにすると収入減もあり得ますし,生活上,いろいろな不便を被ります,そこで自分で作った「独自のルール(基準)」に基づいて「まあ大丈夫」と判断し,あえて検査を受けない人が出てきます,すると,まじめに検査を受けた人がばかをみる,ということにもなります,一方で,現在のように若者にとっては「ただの風邪」ともいえる状況で「必ずすぐ検査を受けて」と言っても全員が素直に従うとは思えません,従わない人が残るなら,「まじめだとばかをみる」事態を避けるためにどんなルールを作るべきでしょうか,今回は,この問題を考えてみたいと思います, 前々回のコラム「新型コロナ 大阪で死者が多い理由」では,大阪人は医師や行政の言うことを聞かず「独自のルール」で行動する傾向があり,このことが,感染者の多さや死亡者の多さの一因になっているのではないか,という私見を紹介しました,そのコラムでは「大阪の問題」として述べましたが,日本全国(あるいは全世界)どこにいってもこういった問題はある程度は起こっているでしょう,独自の判断基準で「コロナではないはず」 「独自のルール」について,実際に私が見聞きした実例を2例ほど紹介しましょう, 【事例1】20代女性 30代の夫が職場で新型コロナに感染した,女性は,家庭内で夫と距離をとるように気を付けていたが,しばらくして自分に咽頭(いんとう)痛と微熱があるのに気づいた,しかし,パートの仕事と子供の保育所への送迎を休むわけにはいかない,「せきがないから新型コロナとは違う」と自分に言い聞かせ,誰にも話さず黙っていた,その数週間後,この話を私に告白した, 【事例2】30代男性 飲食店勤務,店員が何人か新型コロナ陽性で仕事を休んでいた,自身も微熱と咽頭痛があり,新型コロナではないかと疑った,しかし自分が休めば店が回らないし給料がもらえない,そこで「私には味覚障害がないから新型コロナではない」と判断して勤務し続けた,その数週間後,この話を私に告白した,PCR検査センターの列に並ぶ人たち=大阪市北区で2022年1月26日午後4時,藤井達也撮影 この2人は検査を受けなかったので,新型コロナ陽性だったと断言することはできません,でも状況からみて,陽性だった可能性は高いと思います,こういう例は他にもたくさんあるでしょう,「せきがないから」「味覚障害がないから」などという理由を強引にこじつけて「独自のルール」で「コロナではない」と主張するための「言い訳」を用意しているわけです,他の「言い訳」としては,「感染するようなところには行っていない(からコロナでない)」「ずっとマスクをしていた(からコロナでない)」などもよくあります, こういった人たちは他人にうつさないための“独自の感染予防”をしていたのでしょうが,日常生活を続けたわけですから,実際には他人に感染させた可能性がないとは言い切れないでしょう,本来のルールを守った人の不利益 それはもちろん大きな問題ですが,私がそれ以上に問題だと思うのは,こういった人たちがいる一方で,「本来のルール」をきちんと守っている人たち,つまり,わずかでも症状があればすぐに検査を受けて医療者や保健所の指示に従っている人たちもいることです,そういった人たちは,自己隔離することで収入が減ったり,仕事や学業で後れをとったり,大切な試験が受けられなかったり,といった不利益を被ることがあります,関連記事 <新型コロナ 重症化防止の薬を求めるべき人 救急車を呼ぶべき人> <新型コロナ 自宅療養死,高齢者が増 第6波 ワクチン効果低下,重症化リスクも高く> <新型コロナ 扱いを格下げすると入院できない患者が増える> <後遺症?つらい症状に医師は「気のせい」 理解してもらう伝え方は> <新型コロナ 後遺症の頭痛は諦めず治療を> ここで「国家試験」について考えてみましょう,医師,薬剤師
スーパーコピー通販 看護師などの資格を取得するための医療系国家試験は年に1度だけ開催されます,そして,新型コロナに感染すれば受験することができず,再試験は実施されません,つまり1年を棒に振るしかないのです, さて,もしもあなたが試験前日あるいは当日に,微熱と軽度の咽頭痛が生じたとしましょう,このときに「新型コロナかもしれないからまずは検査を受けなくては」と考える人はどれくらいいるでしょう,「解熱薬とせき止めを飲んで予定通り試験会場に向かえば……」という考えが頭をよぎらないでしょうか, もちろん最終的には「たとえ1年を棒に振ってもルールに従わねばならない」と考えて正直に申告する人もいるでしょうが,解熱薬を飲んで申告しないという人もいるのではないでしょうか,つまり「正直者がばかをみる」事態が起こり得ます,大学入学共通テストに臨む受験生たち=兵庫県西宮市の関西学院大で2022年1月15日午前9時14分,久保玲撮影 では,こういった事態を防ぐにはどうすればいいのでしょうか,それには二つの方法があります,一つは受験者全員に,会場到着時に新型コロナの検査を受けてもらうという方法です,この方式なら解熱剤で熱を下げたとしても,感染していれば検査結果が陽性となりますから,不公平は避けられます, もう一つの方法は「症状に関係なく誰でも受験OKとする」という方法です,もちろんこんな方法が現実にできるはずがありません,しかし一蹴する前に,数字を見ながら本当に現実化できないかどうか,今一度考えてみましょう, 大阪府の「年代別重症化率及び死亡率の推移」(陽性判明日別,1月23日時点)=リンク先資料の17ページ=によると,大阪府の新型コロナ第6波の各年代の死亡者数と死亡率は次の通りです, 新規陽性者数 死亡者数 死亡率 19歳以下 1万5167人 0人 0.0% 20~30代 2万6006人 0人 0.0% 40~50代 1万2790人 1人 0.01% 60代以上 5258人 13人 0.2% 医師国家試験などの国家試験を受けるのはほとんどが30代までであることを考えると,もしもあなたが新型コロナ陽性だったとしても,同じ教室で試験を受けた受験生を死に追いやる可能性はほぼゼロです,しかし,その教室にいた試験監督や事務職の高齢者は感染して重症化し……ということになるかもしれません, ならば試験会場に立ち入りできる関係者を若者に限定する,というルールを作ればどうでしょう,つまり「感染する可能性を前提に試験を受ける」のです,この方法なら極めて大規模なクラスター(感染者集団)が起こり得ますが死亡者はほぼゼロです,ただし,医師国家試験は2日間にわたって行われますから,その日は会場に泊まってもらわねばなりません,そして受験者の中に感染者がいれば,2日目の試験が終わった後,おそらく受験者全員が感染者か濃厚接触者となっているでしょうから会場を出られません,試験会場は大学などで行われますから,しばらくの間,大学の機能がまひしてしまいます,よって実際にはこんな方策はとれません,若者は自由,高齢者は不自由な世界 では「感染する可能性があるのを前提に外出する」というこの方法を,もっと広げてみればどうでしょう, つまり,公共交通機関やスーパーマーケット,百貨店,飲食店に出入りできるのは若者だけとするのです,高齢者は若者と接することのないように,外出してもいいのは人通りの少ない通りや公園のみとし,若者と同居している高齢者はしばらくの間,家を出て施設に入るか,若いメンバーとは食事も別にして顔を合わせないようにする,あるいは若者の方が家を出るのです,そして,仕事をしている高齢者はしばらくの間リモートワークのみ(もしくは休職)とし,大学では高齢の講師はリモートで授業を行います
ブランド靴コピー 医療機関は「若者用」と「高齢者用」に分けます,多くの人にとって,こんな不自由な世界はディストピアにしか思えないでしょうし,こんな政策を掲げる政党があるとすれば「高齢者差別だ」と批判されるに違いありません, ですが,期限つきで「可能な限り高齢者は自己隔離する」というルールの下で国民全員が動けばどのようになるでしょうか, 新型コロナに対して強い免疫をつけるには,ワクチン接種を受けるだけよりも,ブレークスルー感染(ワクチン接種後の感染)を経験する方が効果的だと分かってきています(例えばこの論文「新型コロナのオミクロン株に対して,ワクチン接種済み者と感染経験者の血清が持つ中和作用(SARS-CoV-2 Omicron Variant Neutralization in Serum from Vaccinated and Convalescent Persons)」),実際の私の実感としても,ワクチンを3回接種しても感染している人が目立つ一方で,2回目の感染という人はほとんどいません(参考:「新型コロナ 若者は元の生活に戻れるか」), ならば若者には自由に動いてもらい,そして結果として感染することを社会が認めればどうでしょう,若者の間に集団免疫を作ってしまい,その後高齢者との交流を少しずつ元に戻していくのです,新型コロナがはやりだしたころ,「ただの風邪」と甘く見ていた若者が「コロナパーティー」を開き感染して死亡した事例が米国でありました,ですが,現在流行している第6波であれば,そのようなことが起こらないことは大阪府の数字が示している通りです,「強い規制」求める日本,規制撤廃の英国 「若者は完全自由,高齢者が自己隔離」というこの案はほとんどの人にとって突拍子もない意見に思われるでしょう,実際,少し古いデータではありますが,「日経グローカル」誌が昨年10~11月に行った
スーパーコピー 全国の都道府県知事と市区長,計690自治体から回答を得た調査によると,半数近くの回答が「強い規制」を求めていました,古着やアンティーク雑貨が並ぶマーケット,カードでの支払いが一般的だ=英ロンドンで2022年2月5日,横山三加子撮影 他方,海外では様子が変わってきています,英国は,イングランドで新型コロナ対策のすべての法的規制を撤廃することを決め,2月24日からは隔離措置も廃止しました,もっとも,イングランドの住民全員がこの撤廃を歓迎しているわけではなく,医療者を中心に反対意見が少なくないと聞きます,オミクロン株も高齢者にとっては依然「死に至る病」ですから,すべての規制を撤廃すれば死亡者が再び増加に転じるのは間違いないでしょう, おそらく現在の日本では,イングランドを見習え,という声は少数にとどまるでしょう,ですが,隔離を強く求める現状の政策をこのまま続ければ,正直者がばかをみる事態がますます増えていくのは明らかです,感染者や濃厚接触者を隔離するのではなく「高齢者や重症化リスク保持者を“隔離”する」というこの考えを,一度俎上(そじょう)に載せてみてもいいのではないでしょうか, <医療プレミア・トップページはこちら> 関連記事 <新型コロナ 重症化防止の薬を求めるべき人 救急車を呼ぶべき人> <新型コロナ 自宅療養死,高齢者が増 第6波 ワクチン効果低下,重症化リスクも高く> <新型コロナ 扱いを格下げすると入院できない患者が増える> <後遺症?つらい症状に医師は「気のせい」 理解してもらう伝え方は> <新型コロナ 後遺症の頭痛は諦めず治療を> 投稿にはログインが必要です,谷口恭 フォロー 谷口医院院長 たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ,91年関西学院大学社会学部卒業,4年間の商社勤務を経た後,大阪市立大学医学部入学,研修医を終了後,タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事,同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け,帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属,その後現職,大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師,主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める,日本プライマリ・ケア連合学会指導医,日本医師会認定産業医,労働衛生コンサルタント,主な書籍に,「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社),「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)
ブランドスーパーコピー時計 「医学部六年間の真実」(エール出版社)など,谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中, 連載:総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- 前の記事 新型コロナ 大阪の療養センターは「これで安心」の施設になれる 次の記事 新型コロナ 「感染+基礎疾患」で死なないために 注目コンテンツ